アリアドスの足くらい長い構築の経緯
2024年2月24日、第10回リモートポケモン学会(day1)が開催された。
リモートポケモン学会とは 『ポケモン』の魅力を語りたい人が集い、 プレゼンを配信する非公式のファンイベントです。プレゼン内容はポケモンに関係していればなんでもOK。プレゼンターを事前に募集し、作成していただいたプレゼンをYoutubeで配信します。
(公式サイトより)
この日、エネコの倒れる姿がかわいいから意図的にエネコを波で流して倒す構築を産み出し、エネコの人として名を馳せている"ハイツあたたかい毛布"さんが発表したのが
かわいいエネコの生存戦略
である。
エネコの強みはなんだろうという着眼点から、エネコがどのような生存戦略を取ったかを共存をテーマにして考察している。
独創的な表現と愛のある容赦ないエネコ批判、リアルイエネコの流れを組む生存競争論など、非常に素敵なプレゼンなので記事の最後にリンクを貼るからまだ見てない人は是非見てほしい。見なさい。見ろ。
このプレゼンで、最もインパクトのあったフレーズがこちら
こんなみじかい足で
野生を生きていけるんですか
この発表を境に、トリプルバトル界隈ではエネコの足の短さに注目されることが増え、エネコの足の短さについて考える人は世界に100倍くらい増えた。
これが猫ミームである。
さて、このプレゼンの内容を自分なりにざっくりまとめるとこんな感じである
エネコは野生で生きていく為に必要な身体的な武器や、戦闘的な要素がまるで発達していない。
しかし、弱さ≒無害さとチャーミングで親しみやすい姿を持つことで人間に保護されやすくなり、人と共存する生存戦略をとった。
結果としていわゆる「強さ」を持たずして、比較的人里の近くでこんな短い足でも野生を生きていくことができたのだろう。
うんうんなるほど。
分かった。
俺がエネコを最強にしてやる。
最強のメガトンキックを伝授し
こんなみじかい足でも
戦いの中で生きていけることを証明する。
話きいてた?
実際のはなし
トリプルフリーが残り12日となった3/28、俺はもう「がまん」救ったし、トリプルでやり残したことないよなって昔の自分の構築を振り返っていた。
まねっこテクスチャーで草単タイプにするウソッキー構築を思い出し
関連して、まねっこテクスチャーでアイアンテール参照の鋼タイプになるメタルエネコの想像をしてたなぁ~ってなり、
瞬間
エネコにまねっこでメガトンキックさせられる
ということに気付く
エネコのメガトンキックが見たい!
俺がエネコにキックをさせなくては!!
という使命感に駆られ
ついっつぁーに
と書いたところ
やたらとやらせようとしてくる人や
まだ「エネコ」って一言も言ってないのに
エネコの人にいいねされた後押しもあり、エネコ最強化計画を実行するに至った。
このあと毛布さんにエネコの親となる個体も貰えた。
性格はきまぐれだった。実にねこだ。
構築を考えてみよう
①エネコを最強にしよう
エネコが如何に戦うことに向いていないかはプレゼンの方で詳しく語られているが、改めてここでそのスペックを見てみよう。
HP50-A45-B45-C35-D35-S50
見ての通りバランスの良い種族値をしており
猫ポケモンとしては素早さが低いものの、代わりに攻撃が低く、それを補うために耐久が低くなっている。
これは皆さんご存知の勝手に衰弱するトカゲ
エレザードよりも低い耐久となります。
この耐久を強くしても、エネコが倒れるモーションが見られる可能性が減るため、エネコのHP実数値が低いのは変わらず、焼け猫に水である。エネコの攻撃と素早さを上げて、相手の上からエネコがキックするスタンスでいきたい。
一見エネコの素早さ種族値50はメガクチートと同じであり、トリル軸で戦えそうに見えるが、トリルが切れてからは、まねっこが味方と合わせられなくなる。構築は持続的にまねっこができる追い風軸とする。追い風ならエネコとまねっこ元の両方の素早さを上げつつ、両者のS関係が崩れることがない。
ではエネコに必要な能力を見積もろう。
・素早さ
陽気s252振りエネコの素早さ実数値は112であり、追い風で224に上昇する。これはトリプルバトルでよく見かける、意地っ張りスカーフランドロスの実数値214を超える値である。エネコは最速が良さそうだ。
・攻撃
エネコを強化する方法は2つ考えられる。
A. エネコに腹太鼓を自己暗示させる
B. 攻撃を上げてエネコにバトンタッチする
Aの方がよりパワーのあるエネコになるが、エネコに2手必用なのが厳しいと判断し、B.バトンタッチを選択。
えだだいずさんが太鼓暗示エネコを最近「笑顔統一パ」で使用していたが、自分はそのBVを見れてなかったので偶然被るのを回避していたことになる。
ではどれ程の倍率が必要だろうか。
仮想敵は同じノーマルタイプ最強のメガガルーラとする。6世代でメガガルを超えなければ最強と名乗れないからな。
メガガルーラへのA252振り(実数値97)エネコのメガドンキックのダメージがこちら。
攻撃ランク+4 (3倍)
攻撃が3倍であれば乱数で倒せそうなので、シンプルビーム単純4段階上昇か、A+2確定急所は乗せたいところ。
この条件から、自身で追い風しつつ、サンのみ投げつける弱点保険で急所率も上げられる「フワライド」をバトン役に選択。エネコにピントレンズを持たせれば確定急所でダメージを3倍にすることができる。
乱数でメガガルを倒すというのは心もとないが、後述する師匠の登場により、メガガルを倒せない問題は解決した。
②エネコにキックを教えよう
エネコのみじかい足で生きていけることを証明するのに、キックのまねっこ元、つまりキックの師匠が必要である。
昔ライチュウにメガトンキック覚えさせていた記憶があるし、過去技を含めなくても割と候補がいるんじゃないか?
サワムラーは、同族のカポエラーと比べると威嚇がない上に、エネコと同様にたいへん物理耐久が低く(HP50防御53)、キックをする前に生き残れるかという懸念が付き纏う。
その耐久力は皆さんが愛してやまない勝手に衰弱するトカゲ
エレザードよりも低い耐久となります。
3世代教え技でメガトンキックメガガルーラ(略してメガメガガルーラ)を作って頑張って連れて来るという手もあるが、エネコもできればキックの鬼に教わりたいと思うのでサワムラーを採用。ついでのサンのみも投げつけさせよう。
そして、サワムラーは飛び膝蹴りもできるので、エネコはメガガルをまねっこ飛び膝蹴りで倒すことができる。これでメガガル倒せないかも問題は解決した。もちろんエネコにも膝はあるぞ。
③取り巻きを決めよう
ここまでで構築の3体が決定した。
残りの枠はギミックをなんとか成立させる劇薬を処方する。その劇薬はメガガルーラ・ダクホドーブルです。
この2つは2016年アローラ地方を皮切りに禁止物質に指定された。当たり前だ。
残りの1枠はメガガルを先発で出さない場合の自由枠として回しながら調整し
サンダー→トゲキッス→クロバット→シャンデラ
と変遷していった。
基本的な動かし方
第二回ドラフトトリプル大会から使い回しているキングシールド(またはニードルガード)ドーブル+追風 の動き。
相手の追風orトリル役はガルーラ側に出るのを祈って猫だましで止める。
しんぴのまもりは知らん。
メガガルは相手に削りを入れるか、倒しておく。
ドーブルは上から広角ダークホール。当たるのを祈る。
フワライドは気合だめで急所ランク+2に上げる。
メガガルは暴れ放題にも関わらず、頼れるキックの先生に交代。
ドーブルの影打ちでフワライドの弱点保険を起動。
フワライドはAC+2急所+2をバトンタッチ
最強の顔をして威風堂々とエネコが登場する。
相手が最速起きしないのを祈る。
先生がキックを披露し、エネコが「まねっこ」
期待している方向にキックしてくれるのを祈り、更にキックが当たるのを祈る。そして
こんなみじかい足で生きていく最強キックを誕生させる。
キックが成功しようとしまいと追風はここで切れる。
エネコをキックさせる為に5/6枠も使っているのでもはや勝負とか言ってる場合ではないような気もするが
あとは祈祷力とキック力とガルーラの単体パワーで何とかする。
サンのみ投げつけるは・・・
・・・あまりにも厳しかったので
メインは気合だめバトンになった。
せめてサワムラーが伸びる腕で逆サイドに遠投できればな・・・
個別解説
控えめギルガルド/臆病メガゲンガーのシャドボ確定耐え
NN: (・×・)
バトン役。
中央のドーブルがヘイトを稼ぐので大概は2ターン耐える。
フリーに潜ってる期間は、確一を取ってくる珠ギルガルドとの遭遇が少なかった。
他に追風役を選出している場合は気合だめから入ることもある。
相手のゴーストタイプはエネキックの障害になるので、バトンせずにシャドボで倒すこともできなくはない。ただし、その後に眠ってない相手が場に出ることになるのと、バトンしたターンに追風が切れるので微妙。
そもそもバトンせずに戦った方が強くないか?という意見に付和雷同することなかれ。
NN:にげる
クソギミックの成功率を3割上げる劇薬。
元々は味方サンダーのボルチェンで倒してもらう想定の特殊際脆個体。
行動はキンシ→ダクホ→影打ち→ダクホorおきみやげでほぼ固定。
持ち物は広角レンズ。メンハはキンシの上から2ターン連続で挑発されるので不採用。また、最速起きorダクホが外れた相手に、影打ちをしたトーブルを倒してもらった方がありがたいのでタスキも避けた。
神秘や挑発アンコでしっかり対策されるよりも、追風を通せたのにダクホ外す方が精神的ダメージが大きいので広角レンズは正解だった。
NN:ガーディアン
クソギミックの成功率と勝率を1割上げる劇薬。
猫だましを使うので、この構築の第一の猫ポケモンでもある。
相手の追風やトリルを止める役。
メガガルーラを採用することでクソギミックへの
「それってメガガルーラで良くないか?」
という心無い理性的な指摘に
「既にメガガルーラは採用しており、メガガルーラとメガガルーラより強いエネコが並ぶので何ら問題はありません」
という無敵の理論で対抗することができる。
先発サブプランたち
1.サンダー @ラム
追風・ボルチェン・光の壁・熱風
2.トゲキッス@ラム
追風・この指・エアスラ・火炎放射
3.クロバット@オボン
追風・横取り・吹き飛ばし・ブレバ
4.シャンデラ@襷
トリル・封印・守る・シャドボ
上記の順番に変遷した。
メガガルの猫だましでは展開を止められない場合に、メガガルの代わりに先発出場する。(例:相手がトリックルーム2枚)
各々対応できる相手が違うので、誰でも勝率は変わらなかった。
H252メガガルーラを飛び膝で確定1発
エネコ抜き調整
NN:せんせい
キックの鬼にしてキックの先生。
猫だましを使うので、この構築の第二の猫ポケモンでもある。
良い指導者というのはただ強いのではなく、生徒に長く寄り添える者ではないだろうか。少しでもキックをエネコに見せるチャンスを増やすべく、耐久振りになった。
初期案というかサブプランで投げつける用のサンのみを最後まで持ち続けた。エネコのプレゼンがされた2月24日と同日に、自分が第三回からくさオフで"ていじゅ"さんと「サンのみ投げつけ大学」の話をしたことが構築のヒントになっていることに運命を感じる。
命中75しかないメガトンキックは当然外すし、サンのみをおもむろに食って張り切りだして膝を地面にぶつけて倒れるなど、見事なポンコツぶりを晒すことが多い。
これ本当に良い指導者か?
NN:ワガハイは
♀だけど「吾輩は~」って口調のタイプ。おまけに変なレンズまで着けており属性を盛り過ぎである。
猫だましは使わないが第三の猫ポケモン。
まねっこメガトンキックで全てを葬り、こんなみじかい足で生きてる生きてくことを実感したい。
このエネコの活躍はこんな感じ
いや、何で耐えられてんの?
ということが2度起きた。
ここでサンダーへのメガトンキックの計算をしてみる。
サンダーの耐久はwikiにあった意地メガガルの捨て身耐え調整。
そもそもメガトンキックを耐えられている。
注目すべきは赤線を引いた攻撃実数値194
あれ?A+2のエネコの攻撃実数値って意地っ張りA252メガガルーラと同じじゃね?
つまり陽気A+2確定急所エネコの攻撃は、意地っ張りメガガルーラの親子愛と同じダメージだったのである。
すなわち、メガガル捨て身耐え調整がそのままエネコのメガトンキック耐えになってしまっている。
これではエネコはメガガルーラと並んだだけ。
まだエネコは最強にはなれていない。
エネコ、メガガルーラを超えろ・・・!
ということで、エネコを陽気最速から意地っ張り準速に変更した。これに伴い、サワムラーのエネコ抜き調整の素早さも修正した。
(実は陽気エネコで耐えられた試合のBVが残ってなかったので、さっきの映像は意地っ張りエネコが威嚇を食らって倒しきれなかったBVで差し替えている。こんな感じで耐えられたというイメージ。)
このエネコを入れ替えをするまでに26戦して、メガトンキックエネコは略してメガエネコであることに気が付いた。
意図せずしてメガエネコも作っていた。
二代目エネコ
追風で130族抜き抜き
NN:まだない
吾輩はエネコである。名前は「まだない」
猫パンチという貧弱な言葉を「エネコキック」に書き替えるべく、この世に生を受けた。
キックは当たれば強力だが、ふいうちも強力。メガガルーラのふいうちより強いのだから当たり前である。キックで倒しそこねた相手を狩ることもできる。キックの通らないゴーストタイプを倒したいので特性はノーマルスキンではない。
ちなみにエネコはメガトンキックと同じ威力のすてみタックルを自力で覚えるので、キックをさせたい訳ではないならそっちで良い。絶対に良い。(やっぱりメガガルじゃん)
エネコがバトンタッチしてメガガルに繋げられたら面白いなと思ったけど、そんな余裕は1mmもなかった。
うまくいった対戦例
投稿したBVから始まります
キック成績
50戦して
エネコがキックを当てた回数
12回
エネコキック一撃で倒した回数
2回
キック自体は多少はできるが、バトンなしでキックせざるを得ないこともあった。
また、先発ランドロスなどの威嚇がフワライドに入ると、マイナス分も引き継がれてしまい、確一が取れないことも多かった。
戦績
11勝39敗
初期に使用した壁貼りバトン型も含む。
勝率4割を叩き出した「がまん構築」より勝負になってないぞ・・・
ダクホ対策がしっかりしていた構築が多かった。
一試合でエネコが3体倒す活躍もあったが、勝ち試合の半分はガルーラがパワーでねじ伏せた感じ。
この構築の問題点
お祈りポイントが多すぎる。
相手が眠り続けるのを祈った上で
命中75のメガトンキックか命中90の飛び膝蹴りの相手をエネコのきまぐれで決める。
おっ!相手はエネコの目の前にメガガルーラを受け出し
よっしゃチャンス!
そこまでマネしなくいいから!!
せめて重力で命中を上げたいが、今度はサワムラーが飛び膝蹴りができなくなる。
エネコが無視され続けるのを期待した太鼓暗示の方が安定性は上かもしれない。
この構築の良いところ
例え負け確だろうとまねっこでエネコが意外な行動を見せてくれる
エネコ、空を舞え
エネコ、裁きを下せ
エネコ、もう休め
かんそう
楽しいね。エネコのキックが成功するたびにガッツポーズしてた。
エネコの額(ひたい)ほど狭いトリプルバトルの界隈ではあるが
こんな短い足でも戦いの中で生きていく
パワータイプエネコの足跡を残すことができた。えねこはいます。
別にエネコを救いたいとかそういう動機でもなく見てみたいという衝動でエネコを魔改造した。います。
完全にやってること悪の科学者だよね。
こういうことやっていても許されるし、何ならガチパといい勝負をしてしまうこともある。この"えねこ"はそこに居ます
この懐の深さが俺にとってのトリプルフリーの良さだった。
俺の思うトリプルフリーらしい構築を組むことができたので大変満足した。
これは えねこです。
構築のインスピレーション元であり、親エネコの提供をしていただいた"ハイツあたたかい毛布”さんには、エネコロロ級の感謝を申し上げます。
素晴らしい発表を元に新たなエネコを世に出すことができました。
えねこでした
これはエネコの発表です。
よろしくおねがいします。